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たけちゃんForever(1)

小さい頃、セキセイインコを飼っていたのだ。我が家では夜寝るとき以外は鳥籠を開けっ放しにしていて、ほとんどの時間をリビングの床やテレビ台の裏やソファーの背もたれの上なんかで自由に遊んでいたのであった。

カゴの外は危険がいっぱいで、掃除機に吸い込まれて、尾っぽのきれいな羽が抜けて、寸詰りの哀れな姿になったり…。でも、そんなのはまだいい。時として悲しいことが起きる。

初めて飼ったセキセイインコ

飼うきっかけは、小学校1年生か2年生の頃、父が仕事で数ヶ月間、家を離れることになったことだ。子どもたちがというより、母が寂しかったのだろうと思う。「たけ」と名付けて、可愛がっていたのだが、ある日、学校から帰ると、家の中が静かだ。ピリョリーーーッピリョリーーッという鳴き声が聞こえない。

 「おかあさん?たけは?」籠の中にもいない。

「おかあさん!たけは?たけ、どうしたのっ?」

「…」

「おかあさん?たけは?」もう、半泣きである。

「裏口から飛んでいっちゃった。」

「ええーーー!なんでーーー?なんで…」号泣する。

母の目からも涙が落ちた。普段あんなに恐い母の涙を初めて見た。

母はその日の午前中、洗濯機から洗い上がったものを取り出し、庭の物干し竿にかけていたのだそうだ。庭と洗濯機を何度か行き来するので、裏口のドアは開けっ放し。そこへ、スズメ達が飛んできた。たけちゃんはチチチッって鳴き声に反応して、飛んでいったのだそうだ。母は近所を探して歩いたのだが、見つからなかったそうだ。
そういえば、庭からスズメの鳴き声がすると、いつも狂ったようにピリョリーーーッピリョリーーーッと鳴いていた。仲間だと思って、必死に呼んでいたんだろう。その日、裏口のドアが開いていて、たけちゃんは遂に仲間(だと思ってるスズメ)の元に行ったんだ。

その頃は、過酷な試練がたけちゃんを待ってるかもとか考えられなくて、悲しかったのは数日間だけ。その後、父も家に戻ってきて、自分も家族もたけちゃんのことは忘れてしまったように思う。