たけちゃんForever(5)

水死や凍死の憂き目に遭いながらも、たけちゃんは毎日元気に遊んでいた。

突然の別れ

ある夏の夕方、開けっ放しのベランダの窓から猫が侵入してきた。母と弟と3人で夕食を食べていた時のことだ。

カーテンがフッと揺れて、あっ!猫だ!と思った時にはもう遅かった。猫はたけちゃんをくわえて外に出ようとしている。自分は椅子から立ち上がり、なんとか猫が外に出るのを阻止しようと、猫の足のあたりを蹴った。自分は猫も好きなので、乱暴はしたくないのだが、他に仕方なかった。猫は、くわえていたたけちゃんを落として、一目散に逃げ去った。わずか数秒のできごとだ。

慌ててたけちゃんを拾い上げると、瞼を閉じてピクリともしない。胸のあたりに猫が噛んだ跡がポチッとあり、血が少し出ている。深手を負ったようには見えなかったが、小さな鳥にとっては致命傷だったのだろうか。本当に死んじゃったのか?

間も無く父が帰宅した。

父にたけちゃんを見せて、報告する。手のひらに乗せたたけちゃんの身体はまだ温かかった。 でも、びっくりするほど軽い。

父は、小鳥はほんの小さな傷でもダメなんだというようなことを言って、たけちゃんを庭の小さな桜の木の根元に埋めた。

 

ドアや窓を開けっ放しにすることで、何度も悲しいことが起きた。

これが後々、夢に出てくるのである。→窓が施錠されていない夢