『長考力』読みました〜!

まえがきを読む。

ー私が私に合ったやり方で実現できる正しさがあればいい。そのための「読む力」なら、少しは語ることができそうだ。ー

棋士の「読む力」をそのまま一般適用できない、自分は棋士の中にあって異端の部類なのかもしれない、と断りを入れておくあたりが、いやそんな、ビジネスに役立つとかそーゆーつもりの本じゃないんで、あくまでも自分のことを語ってますんで、という佐藤さんの謙虚さの表れか。変に、人生に役立つ、とか、ビジネスマンに向けて、とか気負って失敗してる本が多い中、これは好印象である。

 

次に、あとがきを読む。自分はそうすることが多い。

あとがきにはやられたよ。シンミリした。とてもよかった。

 

タイトルの「長考力」は、まあ、ナントカ力って本が世間で受け入れられやすいので、そーゆーふーに編集者がつけたんでしょう、って感じで受け止めればよいのかな?「長州力」でも「長打力」でも、この際「消臭力」でも、佐藤さんの本なら買っちゃうよ、たぶん。

 

緻密流と呼ばれたり、1億と3手読むと言われたりする由縁にも触れながら、天衣無縫の境地に達するまでのことを振り返る。

2009年に無冠転落、翌年にA級陥落。この辺りから、可能性に蓋をせず、つまり、指し手を自制せずにフルスイングする、自由な指し方をするようになったとのこと。
佐藤さんを「変態流」とか言ってる(それも一つの愛の形なのだが)皆さんは、当然ご存知だったと思うが、佐藤さんは、ただの変態じゃないのだ。すごいお人だよ!


横道にそれるが…
いわゆる羽生世代と言われる棋士の先生の中で、羽生さん、森内さん、佐藤さん、郷田さん、先崎さんの若い頃のエピソードについて語られたものは目にしたことがあって、今でこそお互いに「さん」付けで呼びあっている将棋界の大御所達が、かつては「クン」付けで呼びあっていた仲で、多くの時間を盤をはさんで過ごし、飲んで騒いで過ごし、お互いにライバルだと思っていて、っていう青春時代を送ってきた仲間だったと思うと、ついニヤニヤしてしまうぞ。
特に、羽生さんのタイトル戦を他の羽生世代の先生が解説するとき(例えば、今年の王座戦のサンケイ本社大盤解説会の森内さん、佐藤さん)は、もちろん、どちらかに肩入れするわけもなく、きちんと局面の解説をしてくれるのだが、濃密な時間を過ごしてきた仲間だからこその言葉がチラッと出てきて、すごく楽しい。

 

本書は、佐藤さんらしく理路整然と語られていて、かつ、羽生世代の棋士のことや、おやつのキウイの話など、硬軟織り交ぜた内容で、一気に読むことができましたまる