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たけちゃんForever(10)ー最終回ー

卵を産んでしばらくして、たけちゃんのおなか…お尻に近い辺りが、ポコっと膨れてきた。だんだん大きくなって、歩くとき床に擦れるようになった。そのせいでムズムズするのか、嘴で掻いて、羽が抜け、肌が露わになってしまった。ますますムズムズするのだろう。ひっきりなしに嘴で掻いて、血がにじんでしまうこともある。おそらく、卵巣腫瘍か卵管の異常だと思う。

そんな状態が1〜2年続いただろうか。目に見えて元気がなくなってきた。とまり木の上で寝ることができないので、母が籠の床に小さいタオル地のハンカチを敷いてあげた。籠の外に出ていても、もっぱら誰かの手のひらの上で丸まっていたり、母のエプロンのポケットに入っていた。

たけちゃん Forever

日曜日の朝。階下から母の声がする。
「おとうさん!!」父を呼ぶ。呼ばれた方の父の声は聞こえない。
「ほら、早くっ。◯◯が起きてくるから!見せちゃダメ!」◯◯とは、自分のことだ。何か隠したいらしい。

はっ!たけちゃんーーー((((;゚Д゚)))))))
ガバッとベッドから飛び出し、ドドドドドドッと階段を駆け下りる。
「おかあさん!たけがどうかしたっ?」
続いて弟も2階から降りてきた。

 

その先はあまりよく覚えていない。とにかく、たけちゃんの身体はフワッと軽く、そして、羽はカサカサして、少しひんやりしていた。

 

我が家では、厚紙製の大きな箱の蓋をひっくり返したもの…深さは10cm位だった…の中に鳥籠を置いていた。10cmというのは、籠の底から出入り口の下端までと同じ高さだ。そして、箱の蓋の方が籠より一回り大きいので、籠と箱の間には数センチの隙間があった。

元気だった頃のたけちゃんは、籠から出るとき、扉を上にスライドしてもらうと、まずは、その開口部の下辺にとまり、次に同じ高さの箱の縁にピョンと移動してから、リビングの床にタンって着地していた。
でも、その頃のたけちゃんは、もう、ピョンとかタンっができなくなっていたので、人の手で出し入れされていた。

その朝、たけちゃんは、籠と箱の隙間にはまり込んだ状態で見つかったらしいのだが、母は詳しい状況を教えてくれなかった。そもそも、母はなぜ籠の扉を開けたままにしていたのだろう?

見せちゃダメってことは、もしかすると、哀れな格好で死んでいたのかもしれない。

 

電車を乗り降りする際、電車とホームの間に隙間があるから注意するようにアナウンスがある。自分は、その隙間から線路の砂利やコンクリートを見て、たけちゃんのことを思い出すことがある。

死ぬ間際に、誰かのそばにいたくて、籠から出ようとしたのか?あるいは、急に苦しくなってバタバタしてるうちに、籠から出ちゃったのか?もし、バタバタする音が2階の自分の部屋まで届いていれば…。もし、気づいていたら…。まっ暗な中、籠と箱の隙間に落ちて、這い上がろうともがいてるうちに、体力が尽きたのか?寒かったのか?どこか痛かったのか?一人ぼっちで怖かったかな…と、際限なく考えてしまう。

 

3代目たけちゃんは桜の木の根元に埋められた。2代目たけちゃんと、名前を思い出せないあの子を埋めた桜の木。今度は父ではなく弟が埋めた。自分が玄関先で見つけたあの日から6年程経っていたと思う。我が家で飼われたセキセイインコの中では、一番長生きした。

みんな、天国で幸せに!

今回、いろいろ書いているうちに、2代目たけちゃんが我が家にやってきた時期を誤って記憶していたことに気づいたが、もしかすると、他にも勘違いがあるかもしれない。

例えば、たけちゃんForever(4)のバスタブの水に落ちたエピソードや雪の上で凍えていたエピソードは3代目たけちゃんのことだったかもしれないし、逆に、(7)の水浴びや(8)のラーメン丼に落ちたエピソードは2代目たけちゃんのことだったかもしれない。うむ。黄緑色だし、たけちゃんだし、アヤフヤだ。ただ、輪ゴムをビヨンビヨンする技は2代目たけちゃん、卵を産んだのは3代目たけちゃんで、間違いない。

それにしても、別段、小鳥が好きってわけでもないのに、10回にわたって語り上げる自分って、なんなのか。

 

今、一番思うのは、みんな、うちの子になって幸せだったろうか?死ぬときに長く苦しまなかったかな?ということだけである。どんな生き物でも、痛みや恐怖で辛い目にあったと思うと耐えられないな。