筒井康隆『旅のラゴス』読みましたー

本棚に文庫本が2冊あったのだ。本棚事情の厳しきおりになんということだ(><)

 

「平成6年3月25日 発行」とある。
1986(昭和61)年に徳間書店から刊行、1989(平成1)年に徳間文庫に収録…で、1994(平成6)年に新潮文庫から発行。
いったいいつ買ったのだろう?
もう1冊には、「平成26年1月25日 16刷改版 平成27年1月30日 23冊」とある。
これは去年あたりに買った覚えがある。

改版ってどこがどう違っているのか?と思ったら、文字の級数が上がっていた。迷わず新しい方(字が大きい方)を読んだ。

 

かつて高度な文明を築き、この惑星にやってきた先祖が遺した書物を読むために南に向かって旅をするラゴスという男の、その行く先々での短い話が12話。

先祖は、学者や技術者などのエリートだったが、何もないこの星で一から何かを作ることは難しかったらしく、文明を移殖することはできなかった。でも、立派な図書館的なところに様々な分野の書物を収め、そこを守る者を残して各地に散らばって行ったという。そして、その末裔である(ラゴスも含めた)現代の人々は、科学技術でははるかに劣っているものの、動物と気持ちを同調させたりテレポーテーションする能力を持っている。

ラゴスはその図書館的なところに滞在し、農業、工業、医学、社会学政治学などの文献を読み漁る。周囲に自生している植物の実が「コーヒー」なる飲み物になることを教えて、一帯の人々の暮らしを豊かにする。その豊富な知識ゆえに周囲の人から頼りにされ、王様になる。二人の王妃と、それぞれに一人の男の子をもうけ、やがて王国を去り、生まれ故郷に戻る。先祖の残した書物から得た知識を基に本を書き、学校で講義する生活を送る。行き過ぎた科学技術の発展や急進的な社会の変革が及ぼす影響を考慮し、知識を小出しにして、再び故郷を去る。

 

不思議な世界観というか、自分はついつい頭の中で精霊の守り人シリーズに出てくる土地や人々を思い浮かべた。スルスルと読めるし、面白かった。

筒井康隆の作品で未読のものがまだ何冊も本棚にある。次はどれを読もうか。